金型が完成して、実際にモデルを組み上げた。
大腿骨頭の大きさと、臼蓋の大きさがあまりに違う。
大腿骨の縮尺を間違えたのではないかと疑ってしまった。
再度検証したのだが、大腿骨、骨盤とも正確に2分の1の縮尺で再現されていた。
レントゲン写真なんかで見ると、ピッタリと収まっているように見えてしまう。
軟骨の厚みが2mm〜7mmあると言われている、この厚さを加えると、この大きさになるのだろう。
さて、軟骨をどのように再現するのか?
材質は、柔らかな感触で、滑りが良くないといけない。
どのような形状で、どれくらい臼蓋の中で浮いているのか、レントゲン写真をみてもよくわからない。
とりあえず、作ってみて、感じをみてみる。
立体モデルを設計して、3Dプリンターで打ち出せば、簡単なのだが、3Dプリンターで作成したものは、表面に積層の段差が出て、滑りが悪く、動かした時の感触がものすごく悪い。
アセトンの蒸気を使って、表面を滑らかにする方法もあるのだが、費用がかかりすぎる。
樹脂の製品で、手に入るものの中で、滑りが一番良い素材は、ポリエチレン樹脂
最初、真空成形で制作を考えたのだが、ポリエチレンの融点が高くて、普通の真空整形機では整形できなかった。
そこで、写真のような、オス型の心棒と、形状を押し出すメス型を作っていろいろ形状を変えて試作することにした。
オーブントースタでポリエチレンのシートを温めて、柔らかくなったところで、心棒に押し付けて、メス型で絞り出す。
心棒の太さを2種類作り、カットする位置で深さを変えたり、押し付ける圧力を変えて厚さを変えたりして、試作を繰り返した。
最終的に、完全な半球の形状が一番、収まりと動きがよかった。
温度が高くても型崩れしないシリコン型で制作できることを秋東精工さんと取引のある会社で制作していただけることになった。
とても滑りの良い量産品ができた。